つながり 〜東京医科大学とホリスティック医学〜
西新宿エリアとは、歩行実験を契機に公私ともども数奇な縁で結ばれていく。今回はその中で、とても大切な東京医科大学病院にまつわる話題に触れよう。
6,7年前、休日ともなると、東京医科大学病院によく足を運ぶようになった。当時、日本ホリスティック医学協会の企画運営に少しばかり携わっており、しばしば、講演会やセミナーを病院内の講堂で開催したからだ。
ホリスティック医学とは「病というステージだけにとどまらず、生老病死から死の世界まで、まるごとを対象にしている…”生き方”そのもの」(協会ホームページより)の医学である。ホリスティック(holistic)の語源はギリシャ語で「全体」を意味するholos であり、ここからwhole、heal、health、holyといった言葉が派生した。
さて、1984年のことである。この年、アンドルー・ワイル博士の記念碑的名著『人はなぜ治るのか』の日本語訳が出版され、先端的医療へ閉塞感を抱いていた多くの若き医学生たちに希望を与えた。
中でも強い影響を受けたのが、東京医科大の学生であった降矢英成さん(赤坂溜池クリニック院長)、山本忍さん(横浜神之木クリニック院長)らだった。彼らが中心となって、藤波襄二先生(東京医科大名誉教授)を顧問に勉強会が開催され、これがやがて1987年、日本ホリスティック医学協会の設立へとつながっていく。
東京医科大は日本のホリスティック医学にとって聖地とも呼べる場なのだ。
そんなホリスティック医学の父ともいうべきワイル博士が、健康とは何か、について以下のように記している。健康についてはWHOの定義がよく知られているが、唯一絶対な定義があるとも思えないし、その人によって様々な健康の捉え方があるほうが健康的だとさえ思う。しかし、このワイル流定義が最も自然で、感動的で、ピッタリくる。そしてここには、歩行リズムのゆらぎ解析の原点が見事に集約されている。
「人は世界から孤立分離した状態のままで、全き健康を満喫することはできない。健康とは全体性のことであり、全体性とはつながり−家族・友人・部族・国家・人類・地球とのつながり、また、いかなる超越的な存在であれ、その人が宇宙の創造主だと考える高次の力とのつながりのことである。」(アンドルー・ワイル『ナチュラルメディスン』、上野圭一訳、春秋社)